鳴かぬなら鳴くまで待とう落ち着き

宙組「ウェストサイドストーリー」梅田芸術劇場公演行ってきました。

ストーリーは、言わずと知れた「ロミオとジュリエット」を下敷きに、

物語の舞台を当時のアメリカニューヨークの下町に移し、

ポーランド系アメリカ人と、プエルトリコ系アメリカ人の

二つの非行少年のグループ抗争として描かれています。

レナード・バーンスタインの音楽は、どの曲も聞き覚えのあるものばかり。

この数年間、小池先生潤色のフレンチミュージカル、

「ロミオ＆ジュリエット」に魅せられ、その世界観に慣れた私には、

アメリカンなロミジュリ、

「ウエストサイドストーリー」が、また新鮮に感じられた。

主役の二人、そして、周りの役のメンバー全てに、とても集中が感じられ、引き込まれた。

結末を知っていても、舞台からの気迫で、観客も最後まで集中を持続できる。

作品の力と共に、宙組の力を感じた公演だった。

では、主な配役の感想を

トニー　　真風涼帆

全部とは言わないが、海外ミュージカルの多くが、主役は主に歌い、ダンスはバックダンサーが分担する形が多い。

トニーは明らかにダンスより、歌で物語を紡いでいく役だ。

新人公演初主演 「My Dear New Orleans」 をスカステで観たとき、

うんと下級生なのに、演技には光るものがあって、抜擢は、なるほどと思ったが、

歌は正直まだまだ聞けるレベルには達してなかった。

そこから思えばなんという進歩！

破綻なくしっかりと歌うことに気が行きすぎてるのでは？と感じる時もあったものの、

地声からファルセットまで、難易度の高い歌を見事に歌った。

でも、このトニーという役が、真風氏の魅力を伝えるという視点で観たとき、果たして似合っている役だと言えただろうか

トニーをやるには、真風氏は大人すぎた。

トニーが、ジェッツから距離を置いているのは、確かに彼が、もう他の少年たちとは違うものを見ているからだ。

そしてそれは、『彼がひとり大人の階段を登り始めているから』という解釈をするなら、真風氏の演技の方向性は的を射ているのかもしれない。

だが、もともと、リアルメンズかと思う男っぽさが、真風氏の魅力なので、

大人の階段を登り始めたというより、

もうとっくに登り切った落ち着き方

に見えてしまう時があった。

長所が、短所に見えてしまうなんて、残念過ぎる

あと何年か若かったら…とは、私たち�
�ばさん年代のよく使う常套句だ。

それこそ何年か前の…宙組に移動する前の真風氏なら、

もっと苦労せずにトニーとして存在できたのかもしれない。

だが、面白かったのは、

ロミオは迫りくる得も言われぬ何か不吉ものを感じて、『僕は怖い』と歌い、

トニーは、運命の恋に出会って、『何も怖いものはない』と言う。

私は、トニーの役をイメージするのに、ロミオに縛られすぎていたのだろうか？

マリア　　星風まどか

真風氏にとって、あまり似合いの役ではなかったのに反し、

マリアはまさにまどかちゃんにぴったりの役だった。

恋に浮き立つ気持ち、『 Ｉ ｆｅｅｌ ｐｒｅｔｔｙ 』(素敵な気持ち）、

愛を知りアニータに唄う『Ｉ ｈａｖｅ ｌｏｖｅ 』は、恋により成長し必死さが胸に迫る。

トニーの亡骸を前に、恨みを知った今なら、あなた達を殺せるという姿。

彼女というフィルターを通すことで、

マリアの息遣いが、初恋の甘酸っぱさが、より、リアルにこちらに届く。

歌も踊りも、そして舞台における華やかさも、全てにおいて素晴らしかった。

ベルナルド　　愛月ひかる

登場したときから、愛ちゃんベルナルドが纏っているヒリヒリした空気。

息をのんだ。

プエルトリコ人と差別され、家族や、仲間以外の誰をも信じないし、寄せ付けない男。

一言も発せずとも、ベルナルドとして舞台に登場しただけで、

その纏う空気によってそれらを一瞬のうちに感じさせる。

私は常々、演技力に対して、彼女の声の高さがもったいない、と感じていた。

だが、この舞台では、ほとんど、それを意識することがなかった。

ルックス、ダンスと、身のこなしのあまりのカッコよさに、気を取られたせいだろうか？

精悍な男の匂い立つ色気。凄かった。

アニータ　　桜木みなと

この人の端正な顔が、男役としては線が細いと思ったこともあった。

しかし、女役をやると、やはり男役ならではの押し出しの良さ！

ベルナルドとの並びの良さ、

二人が放つ色気には、体温があった。

そして、マリアに見せる姉のような包容力。

ジェッツ達に凌辱され、嘘を伝える痛々しさ…

彼女の好演を見るにつけ、和希そらのアニータも観たかったなと、

遠征不可の身を改めて嘆いたのも事実。

ドク　　英真なおき

ロミジュリで神父を幾度も演じた英真さんが、

その神父のような役割のドクを演じて下さるのが、うれしかった。

ただ、この作品では、トニー以外の�
��ェッツの誰も、彼の忠告を聞こうとしない。

神父様は、自分の信仰に裏切られ神に問うが、

ドクは、救いのない時代に、自分の無力さを神父以上に感じていたのではないか？

リフ　　澄輝さやと

よく体も動き、タッパもあるので、真風氏、愛月氏と並び立つ

ジェッツのリーダーという並びの良さはあった。

だが、いきり立つメンバーにクールにと歌う場面。

本当は、自分自身も熱く爆発しそうな気持ちを抑えつつ、

リーダーとして歌う（自分にも言い聞かす）のだが、少し弱い。

決して歌が、ダメとかそういうのではない。

ポーランド移民の子供である、

ジェッツの彼らも、決して恵まれた家庭の子女ではないのだ。

だが、プエルトリコの匂いを放ちまくる、ベルナルドに対し、

リフからはそうした普段の鬱屈を感じる事があまりなかった。

どうしてもロイヤル感が邪魔をしてしまう。

その点で、真風氏と同じで長所が、短所になってしまったのだろうか？

澄輝自身のいい人な部分が、

シャークスと決着をつけたがってる男に見えない一番の原因かもしれない。

チノ　　蒼羽りく

決して多くはない出番だが、トニーの安否を問うマリアに、ベルナルドが、トニーに殺されたと伝え、銃を持ち出す。彼の中の心情の変化がしっかりと伝わった。　　

その他・・・

「王妃の館」では、おばさん以上・おばあさん未満の、微妙な年齢のおばさまを、さりげなく演じ、「神々の土地」では、ラスプーチンの桃をスゴイ形相で拾って食べていた、

演技巧者花音舞。

今回は、ロザリアという、プエルトリコを無邪気に懐かしみ、マリア達と戯れる若い役。

演技の幅の広さに脱帽。

同じく、役の幅では負けないクラプキ巡査の凛城きら。

この方も「神々の土地」では、あんなに美しくドレスを着こなし、皇后を演じていたのに、今回の肉布団も自然だった。

綾瀬あきな　群舞の中でも目立つダンス力！シャークスのアニータとは、また違う気の強さもしっかり表現。

ディーゼル、風馬翔、熱さ全開。

アクション留依蒔世、ええ声～！聞き取りやすさNO.1

エニボディース夢白あや、男の子にはなってない匙加減！

小春乃さよ　影ソロの素晴らしさ！幸せに包まれる。

フェンス越え。スカステ東京公演映像で観て知ってはいたけど、生で次々長いおみ足が、ひゅーんと入ってくると、すごく迫力あった。ケガの無いよう祈りつつ、堪能した。

泣きす�
�て、超ブサイクな顔で劇場を出てきたおばさんがいたら、それは私です。

涙腺弱すぎて、絶対タオルハンカチ欠かせないよ～という、私とそっくりな涙もろい方、

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