時計仕掛けの女に声を掛ける
プロローグ
「神様、もし願いが叶うとしたら・・・
アイツの笑顔をもう一度、見せて下さい・・・」
2001年、秋、ここは大阪ミナミの繁華街。只今午前1時。
夏も過ぎて少し肌寒い・・
「こら!!」
「学生がこんな時間に何をしているんだ!!」
と、男が若い女に近寄ってくる。
「えっ!!」
びっくりした表情で若い女が振り返ると、
ニヤっと少し微笑んで男が近づいてくる。
年齢は40過ぎぐらい、ビシッとしたスーツを着こなした紳士的な男が若い女に声を掛ける。
「こんな時間に学生がブラブラしていたらダメじゃないか。」
少し安心した表情で若い女が答える。
「おじさんこそこんな時間に何してるの?」
「あー俺!?」
「実は終電に乗り遅れちゃってね。帰れなくなってしまったんだよ。」
「君こそここで何してたの?」
「実は私も終電に乗り遅れちゃったの・・・」
お互い何の警戒心も無く普通に会話がつづく・・・
グウー
若い女のお腹が鳴る。
「もしかしてお腹減ってるの?」
「終電乗り遅れちゃったから・・・」
悪戯に若い女が微笑む。
「えっ!!」
「それって何か関係あるの?」
「実は俺もお腹減ってたんだ。何かご飯でも食べに行かない?」
「おごってあげるからさっ!」
と男が言うと、
「どうしよっかなー」
少しもったいぶった態度で若い女が答える。
「好きな物食べてもいいから。」
「本当!!なんでもいいの?」
うん、と頷く。
「ラーメンが食べたい!!」
「そんなのでいいの!?」
少し男が驚いた顔をする。
二人は少し歩き、目的のラーメン屋を見つけてそこに入る。
午前の2時前だというのに、けっこうお客さんが入っている。
「いらっしゃい!!!」
元気のいい若い男の声が店内に響きわたる。
「何名さまですか?」
二人と手でジェスチャーして、席に連れて行かれる。
二人とも腰を下ろして、メニューを見る。
周りはざわざわとウルサイ。
「何にする?」
「ラーメンと餃子!!」
とすぐに答える。
「おじさんは?」
と笑顔で聞いてくる。
「じゃー俺も同じで・・・」
男(しかしこの女は何を考えてるんだろう・・・)
(軽いつもりで声を掛けてみたんだが・・・
(こんなにうまくいくとは・・・)
男はよからぬ妄想の世界に入っている。
「・・じ・・さん!!」
「おじさんっ!!」
男は若い女の方を見る。
「おじさん話聞いてる!!」
「あ、ごめん、ごめん、」
「で、何だったかなー」
「だからー!おじさんって何やってる人なん?」
「あー俺?ただのサラリーマンだよ!!」
「君は学生?」
男(どう見ても高校生ぐらいにしかか見えないが、体つきはもう大人だな・・・)
「うん、中三!!」
「中学生かー!!家の娘と変わらなんなー」
「ふーん」と言いながらラーメンを食べている。
なんでもない話がつづく・・・
ラーメンも食べ終わり二人は店を出る。
もう時刻も午前3時。
「ご馳走様!!」
「これからどうするの?」
「おじさんとホテルに行く!!」
「えっ!!」
すこし慌てた様子で男が聞き返す。
「何て?」
「だからーホテルに行くんだって!!おじさんもその気だったんでしょ?」
「でも、私は高いよ!!」
と言って、すこし微笑む。
男(こいつは本気で言っているのか?しかしこんな話はめったにない)
「これでどうかなー!?」
男は手で3をつくる。
「えー!!」
少し不機嫌そうな顔になる。
「これだったらいいよ!!」
若い女は手を広げて5を作る。
少し男は考え込むが、もう気持ちは押さえ切れない。
「わ、わかった。」
「じゃ決まりね!!」
二人は夜の町に消えていく・・・
ピカッ!!
光が差し、一瞬目の前が明るくなる。
「んっ!?」
「な、何!?何だ・・・!?」
「えっ!!」
「何だったんだろうか!?」
「う・・・」
「うっ・・うそ・・・!?」
「何これ・・・!?」
「嘘だー!!」
男は膝から崩れ落ちる。
女に声を掛けるに関する情報を集めてみました♪
新聞小説 「ひこばえ」(7) 10/12(129)~10/30(147)
作:重松 清 画:川上 和生
バックナンバー
第六章 カロリーヌおじいちゃん 1~18
父が借りていた本を返却するため、和泉台ハイツから徒歩十分ほどの和泉台団地に向かう洋一郎。大家の川端久子さんが先導。
自分たちが昔暮らした団地に驚くほど似たその佇まい。
私設の図書館「和泉台文庫」の成り立ちについて説明する川端さん。住民同士の交流を目的として、有志の寄付により今では蔵書三千冊。
川端さんもここへ来るのは初めて。
高校生風の女性に声を掛けるとすぐやって来た。「田辺(娘)」の名札。
事情を説明する川端さんだが、ピンと来ていない。彼女は臨時の手伝いであり、もう一人に声をかけた。
その女性の名札には「田辺(母)」とあった。
娘は陽菜、母は麻美さんといった。創設当時からのスタッフ。
川端さんの説明に麻美さんは「石井さんが?」と返した。
週に一度は来ていたので父の事は良く知っていた。
登録後しばらくは、毎日の様に来て「カロリーヌ」の名を冠した児童本を全巻読破した。
「カロリーヌおじいちゃん」とは、いつも同じ席でその本を読んでいた父についたあだ名。
カロリーヌの名前に記憶があり、麻美さんが持って来た本を見て驚く洋一郎。家にもこの本のシリーズがあった。
元々は洋一郎が小学校に上がる時に買ってもらったものだが、姉の方が夢中になった。幼少期の大事な記憶。
貸し出し用にあったのは復刻版だが、たまたまあったオリジナルを見せた時、父は涙を流したという。
また、常連になった父に、イベントの朗読劇で子供を見送るおじいさんの役を頼み込んでやってもらったと話す麻美さん。
彼女にとっては「いい人」でしかない。
洋一郎は父と自分、母や姉との事を麻美さんに説明した。
家族を捨てた男。
驚いた麻美さんだが、思い出した様に、朗読劇の時、相手の子どもが姉弟の二人だったのがやり難かったと言われた話をした。
麻美さんのところで父が写った写真がないか探してもらったところ、武蔵野電鉄の広報誌「ムサQ」に掲載された和泉台文庫の記事に、後ろ姿ではあるが父の姿が写り込んでいた。
全体の佇まいに既視感があった。
その話を姉にした。話を聞くやいなや怒り出す姉。カロリーヌの本は、姉も自分の娘に復刻版を買って読ませていた。
すらすらと登場人物の名前が出て来る。だが今の父の話を聞いて、もう二度と読み返さないと言った姉。
その話は早々に切り上げられ、孫の遼星の話に入る姉。母への連絡を妻の夏子にさせた事を叱る。
だが自分が話した時に、父の事を隠しおおせる自信がなかった。姉からは絶対話してはダメと言われていた。
なおも食い下がる様に、父が「原爆句抄」を借りた時のいきさつ、麻美さんに話した尾崎放哉や山頭火の様なフラフラした生き方に惹かれる、といった話もしてみた。
「そんなのどうでもいい」とにべもなく断ずる姉。
母はもう八十過ぎ。長谷川のお義父さんと四十年近く連れ添って、今は血縁のない長男の家族と気兼ねしながら暮らしている。
姉が見て来た母の様々な苦労。泣いているところも、土下座して謝っているところも。その全ての出発点は「あのひと」なんだから。
父が残していた、携帯電話のアドレス帳や、カレンダーに残していた誕生日の事を話しても、無言で電話を切った姉。
その夜、帰宅した夏子に父の事を初めて話した。実の父親の話など、この三十年の付き合いの中で、数えるほどしかしていない。
子供や孫にやっかいな事を背負わさないのも私たちの務めだと言う夏子。
遺骨を手元に置いた方がいいという住職の話には「だめよ、そんなの」と一瞬での答え。
寝酒を飲みながら、和泉台文庫で借りて来た「カロリーヌとおともだち」のページをめくる。
姉と一緒に読むカロリーヌの本。母の姿の向こうにごろんと横になってタバコをふかしている父の姿。
懐かしさでまぶたの裏がじんわりと熱くなった。
感想
父が借りていた本を返しに行った「和泉台文庫」を巡る話。
洋一郎や姉にとって幼少期の重要な位置を占める「カロリーヌもの」の児童書。それを懐かしく読み返していた父の姿。
だが父にとってその思い出は悔恨の固まりでもある筈。
事実姉は、カロリーヌと父が繋がった事を知っただけで「もう二度と読み返さない」と激怒。
洋一郎が、ノー天気に懐かしがっているだけなのにもかなり違和感。
ただ、これを読んで思い出すのは重松の過去作「流星ワゴン」。
事故死して車ごと幽霊になった親子と共に、危篤の父の過去を巡る旅に出掛ける男の話。父の若い時の姿「チュウさん」を通して父が若い時に出会った人生の分岐点に立ち会う。
父が、一体どうして母と別れてしまう事になったかという、究明のナビゲーターとして洋一郎を設定し、架空ではない「実世界」の話として構築しようとしているのか?
ところで、「」は実在する絵本。
絵本ではあるけど、その筆致は子供こどもしておらず、細かく描き込まれた内容は、確かに部分ごと様々な物語を膨らませる事が出来る。
これは凄い!女に声を掛けるを便利にする6つのツール
新聞小説 「ひこばえ」(7) 10/12(129)~10/30(147)
作:重松 清 画:川上 和生
バックナンバー
第六章 カロリーヌおじいちゃん 1~18
父が借りていた本を返却するため、和泉台ハイツから徒歩十分ほどの和泉台団地に向かう洋一郎。大家の川端久子さんが先導。
自分たちが昔暮らした団地に驚くほど似たその佇まい。
私設の図書館「和泉台文庫」の成り立ちについて説明する川端さん。住民同士の交流を目的として、有志の寄付により今では蔵書三千冊。
川端さんもここへ来るのは初めて。
高校生風の女性に声を掛けるとすぐやって来た。「田辺(娘)」の名札。
事情を説明する川端さんだが、ピンと来ていない。彼女は臨時の手伝いであり、もう一人に声をかけた。
その女性の名札には「田辺(母)」とあった。
娘は陽菜、母は麻美さんといった。創設当時からのスタッフ。
川端さんの説明に麻美さんは「石井さんが?」と返した。
週に一度は来ていたので父の事は良く知っていた。
登録後しばらくは、毎日の様に来て「カロリーヌ」の名を冠した児童本を全巻読破した。
「カロリーヌおじいちゃん」とは、いつも同じ席でその本を読んでいた父についたあだ名。
カロリーヌの名前に記憶があり、麻美さんが持って来た本を見て驚く洋一郎。家にもこの本のシリーズがあった。
元々は洋一郎が小学校に上がる時に買ってもらったものだが、姉の方が夢中になった。幼少期の大事な記憶。
貸し出し用にあったのは復刻版だが、たまたまあったオリジナルを見せた時、父は涙を流したという。
また、常連になった父に、イベントの朗読劇で子供を見送るおじいさんの役を頼み込んでやってもらったと話す麻美さん。
彼女にとっては「いい人」でしかない。
洋一郎は父と自分、母や姉との事を麻美さんに説明した。
家族を捨てた男。
驚いた麻美さんだが、思い出した様に、朗読劇の時、相手の子どもが姉弟の二人だったのがやり難かったと言われた話をした。
麻美さんのところで父が写った写真がないか探してもらったところ、武蔵野電鉄の広報誌「ムサQ」に掲載された和泉台文庫の記事に、後ろ姿ではあるが父の姿が写り込んでいた。
全体の佇まいに既視感があった。
その話を姉にした。話を聞くやいなや怒り出す姉。カロリーヌの本は、姉も自分の娘に復刻版を買って読ませていた。
すらすらと登場人物の名前が出て来る。だが今の父の話を聞いて、もう二度と読み返さないと言った姉。
その話は早々に切り上げられ、孫の遼星の話に入る姉。母への連絡を妻の夏子にさせた事を叱る。
だが自分が話した時に、父の事を隠しおおせる自信がなかった。姉からは絶対話してはダメと言われていた。
なおも食い下がる様に、父が「原爆句抄」を借りた時のいきさつ、麻美さんに話した尾崎放哉や山頭火の様なフラフラした生き方に惹かれる、といった話もしてみた。
「そんなのどうでもいい」とにべもなく断ずる姉。
母はもう八十過ぎ。長谷川のお義父さんと四十年近く連れ添って、今は血縁のない長男の家族と気兼ねしながら暮らしている。
姉が見て来た母の様々な苦労。泣いているところも、土下座して謝っているところも。その全ての出発点は「あのひと」なんだから。
父が残していた、携帯電話のアドレス帳や、カレンダーに残していた誕生日の事を話しても、無言で電話を切った姉。
その夜、帰宅した夏子に父の事を初めて話した。実の父親の話など、この三十年の付き合いの中で、数えるほどしかしていない。
子供や孫にやっかいな事を背負わさないのも私たちの務めだと言う夏子。
遺骨を手元に置いた方がいいという住職の話には「だめよ、そんなの」と一瞬での答え。
寝酒を飲みながら、和泉台文庫で借りて来た「カロリーヌとおともだち」のページをめくる。
姉と一緒に読むカロリーヌの本。母の姿の向こうにごろんと横になってタバコをふかしている父の姿。
懐かしさでまぶたの裏がじんわりと熱くなった。
感想
父が借りていた本を返しに行った「和泉台文庫」を巡る話。
洋一郎や姉にとって幼少期の重要な位置を占める「カロリーヌもの」の児童書。それを懐かしく読み返していた父の姿。
だが父にとってその思い出は悔恨の固まりでもある筈。
事実姉は、カロリーヌと父が繋がった事を知っただけで「もう二度と読み返さない」と激怒。
洋一郎が、ノー天気に懐かしがっているだけなのにもかなり違和感。
ただ、これを読んで思い出すのは重松の過去作「流星ワゴン」。
事故死して車ごと幽霊になった親子と共に、危篤の父の過去を巡る旅に出掛ける男の話。父の若い時の姿「チュウさん」を通して父が若い時に出会った人生の分岐点に立ち会う。
父が、一体どうして母と別れてしまう事になったかという、究明のナビゲーターとして洋一郎を設定し、架空ではない「実世界」の話として構築しようとしているのか?
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でもGGでした(•̀ω<́ )☆
ラスト戦でドヤンキー軍団に囲まれて怖かった🤮
いつも贈り物ありがとうございます🤩
ピピ美顔で反応されると、イラッとするだろうな〜🥴と思いつつ遊んじゃうw https://t.co/2qA0GiSF3h