何も無い一日だったり
面倒な事を押し付けられた日だったり
仕事で自分自身の描きたいものでは無いものを描いている時だったりは、時間の流れがとてつもなく長く遅い
それを思えば先輩と離れるまでの時間で
色々な聞きたい事、知りたい事、お互いの事を話せる筈なのに、全く時間が無くて驚くし少し焦ってしまう
「…先輩、あの…」
「チャンミナ、声が枯れてる」
「…っ言わないでください
自分で分かってますから」
ベッドのなか、何も身に付けないまま先輩と寄り添う
朝、この先輩の家にやって来て一度抱き合ったのに、
更に午後を過ぎて二回も
それでもお互いに求める気持ちが収まらなくて
触れ合ったけれど、さすがに短時間で三回、は
お互い三十路にもなって無理だったからキスをしたり、
触れ合って息を整えて体力を回復させた
「今更かも、なので
何だか聞くのも恥ずかしいんですが…」
「何?チャンミナに知りたいって思ってもられるのは嬉しいよ」
先輩の右腕を枕にして並んで横たわる
その右手は僕の胸辺りを彷徨っていて、
たまに敏感なところを掠める
「…っ…その…
仕事は今何を…?
写真だとは噂で聞いていますが、具体的に知りたくて」
そう、僕は『今』の先輩の事をまだ何も知らない
昔よりも自然体になった事や
僕に対して甘えてくれるようになった事
本当は東京にいる事を息苦しいと思っていた事
それらは少し分かったけれど、
日常の先輩を何も知らないんだ
「あはは、確かにそうだな
先に告白したりまた付き合おうだとか…
今みたいに裸を見たり…
少し不誠実だったかな?」
「…そんな事無いです
僕も欲しかったし、好きで止まらなかったから」
昔よりも厚くなった胸板に顔を埋めた
ついさっきまで汗ばんでいたのに
今はもう汗も引いていて、
それを少し残念だと思ってしまった
「雑誌と契約して写真を提供してるよ」
「専属のフォトグラファーという事ですか?」
「専属じゃないけどね
フリーランスで色々受けてるよ」
そう言うと、先輩は「ちょっと待ってて」
と告げてゆっくり右腕を僕の首の下から引き抜いた
少し寂しいけれど、そんな事言うのも顔に出すのも恥ずかしいから何でも無い振りをしていた
でも、先輩はくすりと笑ってこめかみにキスをした
「せっかくだからチャンミナにも見て欲しい」
裸のまま何も気にする事無く立ち上がる
ベッドサイドの本棚から雑誌を何冊か取り出して
直ぐにベッドのなかに戻って来てくれた
「これ、隔月で連載してるんだ」
それは僕でも知っている自然科学系の雑誌だった
なかなか手に取って読む事は無いけれど、
名前を聞けばきっと知っているひとは多いだろう
先輩は座って、嬉しそうに雑誌を捲る
僕も起き上がって雑誌を覗き込もうとしたんだけれど…
「…っ…あ…」
「痛い?大丈夫?」
「…大丈夫、です」
先輩を受け入れた場所
痛みもやはりまだ有るけれど…
そうでは無くて、少しだけ先輩のモノが残っていて
体勢を変えたらつう、と流れたのが分かって身体が震えた
心配そうに僕を覗き込むから大丈夫、と笑った
「連載なんて凄いです
この雑誌、書店で見た事は有りますが
読んだ事は無くて…
これからは定期購読します」
「本当に?ありがとう
チャンミナの興味を引く記事が有るかは分からないけど、なかなか興味深い特集も多いんだ」
先輩は自身が興味のあるページを開いては
僕にそれを見せてくれる
都会で忙しなくしていると全てがいつも流れ作業のようで、それは当たり前の事で嫌だとも思っていなかったし、東京には何だって有ると思っていた
だけど、先輩が見せてくれる雑誌のなかには
宇宙の事だったり世界中の動植物や社会情勢まで
何気無くニュースを見ていても気付かないような事が書いてあって、興味を引かれた
「…可愛い」
先輩に雑誌を手渡されてぱらぱらと捲っていたら
そこには鹿の写真が載っていた
どうやらそれは先輩の写真では無いし、
スコットランドだと書いてある
「そう言えば、チャンミナは大学でバンビって呼ばれてたよな
目が大きくて、身長は有るのに小動物みたいで…」
「…そんな恥ずかしい事蒸し返さないでください
男がバンビなんて…」
「そう?今でもバンビのように可愛いし…
でも、今は可愛い、より綺麗になったかな」
褒められている事は嬉しいけれど恥ずかしくて
雑誌の記事を読んでいたら、
先輩の右手が伸びてページを捲る
「あっ読んでたのに…」
「ごめんごめん
俺の連載も見て欲しくて」
言われて思い出した
鹿も可愛いけれど、
それより先輩の写真と連載記事が見たいんだ
「見たいです、先輩の写真も記事も」
「本当に?鹿の方が良いんじゃないの?」
「そんな事無いです
だって、
どうして今までこの雑誌を見て来なかったんだろうって後悔してるんです」
ベッドの上で脚を伸ばして座る
肩と肩、先輩の右腕と僕の左腕がぴとり、とくっつく
先輩は少しだけ恥ずかしそうに笑って、
後ろの方のページを捲った
「これ、連載って言っても小さなコラムだけど」
そう言って指差したのは
一ページの半分を使ったコラムだった
「え、これ…」
驚いたのは、
先輩の顔が連載タイトルの横に載っている事
「どうした?」
「顔なんて載せてたら…
誘われたりとかファンレターとか…
先輩かっこいいから、きっと有りますよね?」
上目遣いに見つめたら少しだけ瞳を泳がせる
「可愛い女の子とか…
そうじゃなくても編集部の女性とか…」
「……」
「やっぱり…嫉妬します」
何も答えてくれないから勝手な想像ばかり膨らむ
僕を好きだと言ってくれる先輩に嘘は無い筈
だけど、きっと先輩を良いと思うひとはたくさんいる
それは大学時代だって同じで、だから僕はそんな先輩と恋人である事に劣等感を抱く事もあった
でも、今も昔と同じように自分に自信なんて無いけど、
諦めたり引いて後悔したくないし、
先輩を好きな事はやっぱり譲れない
「僕だって先輩を諦めないし…
誰かに渡したりしたくないです」
俯きながら言ったら、
頭に何かが触れた
掌かと思って顔を上げたらもう一度触れて、
それが唇だったと分かった
「あの頃も今も…見てくれで迫って来るひとはいるよ
でも、自分を出せるのはチャンミンの前だけだって分かった
だから心配する事なんてひとつも無いよ
それよりちゃんと中身も見て?」
「え…あ、すみません」
先輩の顔が載っている事で焦ってしまった
僕は目先の事しか見えていなくて視野が狭い
情けなくて溜息を吐いたら、
今度はぽん、と右手が僕の頭に乗せられた
「先輩?」
「好きなひとに独占欲を見せられるのは、
こんなに嬉しいんだな
大学の時、チャンミナはあまり何も言ってくれなかったから本当は少し寂しかった」
「…それは…我慢していて
迷惑を掛けたく無かったし」
そう言うと「そうか」と懐かしむように、
少し切なげに微笑む
僕はあの頃こどもで、先輩に対して恋愛感情だけでなく『敵わない』という思いもきっと大きかった
だから身を引いて別れを了承したし、
付き合っている時も我慢した思い出がある
それでも当時の僕は先輩を本当に好きで、
嘘を吐いた訳でも無い
でも…
「これからは、後悔しない為にちゃんと独占欲も出していきます
あの頃は我慢するのが正解だって思っていたから…」
「うん、お互いに思っている事はちゃんと伝え合おう」
先輩のコラムは北海道の自然を切り取った写真と、
それから先輩の自然に対する思いが文字として綴られている
それはとても優しく、優しいのに芯があって、
今の先輩を見てそのままだと感じた
「先輩はやっぱり凄いです
僕は…絵を描く事が好きでそれを運良く続けてこれていますが、まだ夢や目標は無くて…」
「今はチャンミナはどうしているの?
コンクールで入選していただろ?」
そう、先輩は僕の名前を
小さなコンクールのなかに見つけてくれていた
嬉しいけれど、それくらいしか無いんだ
「描きたいものを描いてはいます
でもなかなか収入にはならなくて…
今は知人の画廊で働きながら絵を勉強して描いています」
だから、明日はいつも通り画廊へ働きに行く
受付と雑務が主だから座っていられるし、
捻挫していても支障は無い
二歳の年の差はあるけれど、
それを差し引いても
先輩と僕の差はきっと縮まらないだろう
先輩が撮った北海道の美しい景色を指でなぞった
「チャンミナ」
「はい、先輩」
「ユノ、だろ」
呼び方を訂正されて思わず顔を上げたら、
優しく僕を見つめる先輩、いや、ユノ
「…ユノ、まだ慣れないです」
「美大を卒業して、
専門分野以外で働くひとも多いんだよ
チャンミナだって知ってるだろ?
そんななかで絵を描いていられる事は、
好きな事を続けていられるのは誇るべき事だ
自分を卑下しないで」
「……ありがとうございます」
比べると自分の小ささが恥ずかしい
だけど、先輩はこんな僕にも優しい
「俺だってまだまだ夢半ばなんだ
それに、ひとりで叶えられるか…
寂しいしどうしようかって悩んでるんだ
聞いてくれる?」
「夢、先輩の…んっ…」
聞こうとしたら、キスで唇を塞がれた
「ユノ、だろ」
「…ユノ……」
名前を呼ぶと、少しずつ先輩が近付いて来る気がする
夢の話を聞きたいけれど、一度触れたらまた触れたくなって、先輩を見あげたら困ったように笑う
「キスしてください…ユノ」
「…こんな時に名前を呼ぶなんて、
チャンミナも成長したな」
時間はやっぱりどれだけあっても足りない
それでも、僕達の距離は少しずつ縮まっている
そして、離れるまでの時間もそれに比例するように縮まっているんだ
ランキングに参加しています
お話のやる気スイッチになるので
読んだよ、のぽちっ↓をお願いします
実はここにも恋人
※妄想のお話です。
今月も喫茶行きたい、
後半少しだけ東京行くから←もう沼
「でーきたー!」
完成したのはたくさんの可愛い…?クッキー。
メンバーの顔のクッキーと、あと…
何故か、大量のぶた。
「…ねぇ相葉ちゃん、ぶたばっかじゃん(笑)」
「俺ら、すいーつぶぅ♪だからね~♪」
「何だそれ?(笑)」
「あれ、大ちゃんアプリ見てないの?」
「見てない…。」
そーいやスイーツコーナーにぶたの小さい置物あったけど…
しかも、このクッキー、だんだん上手くなるどころか雑になっていくのが相葉ちゃんらしい。
最後のやつなんて鼻という特徴すらないから、牛…いや、犬みたい。
ニノが見たら化け物とか言いそう。
「さ、焼こっか!」
さっき余熱であっためておいたオーブンの中の空気がもあっと漏れる。
「…一緒に日本酒入れたら、日本酒出来るかな?!」
「絶対ダメだよ!(笑)」
「えー、そう?」
相葉ちゃんとキッチンに立つのは、いつAの嵐が始まるかという危険がいっぱいで目が離せない。
クッキーが焼けるのを待ってる間、テレビをつけて買ってきたお酒を開ける。
たまたまかかってきたのは、昔やってた俺らの番組の再放送。
「自分らの番組見ながら飲むなんてウケる(笑)」
「そだね(笑)」
カンパイ、と鳴らすグラス。
相葉ちゃんの突き出す勢いが強くて、たぷんと揺れる。
慌てて口を持っていくと、ハイボールが喉をその形に冷やしていく。
「おいしーねぇ!」
「ねぇ。幸せだねぇ。」
昼飯の時も2杯程飲んでて。
身体がそれを思い出したかのように、酔いがすぐに回る。
「ねー、覚えてる?この日さぁ、収録前にリーダーがぁ…」
「んふふふ、よく覚えてんね?」
「あれめっちゃ面白かったから!翔ちゃんとか笑いすぎてお腹つったとか言ってさぁ」
「んふっ、ふふふ、あったねぇ。痛い痛いって言ってる時に松潤が入ってきて、そんで医者呼ばなきゃってマネに電話し始めて…」
「俺が笑ってるよってアピールしようとして『よく見て!涙出てるから!』って言ったら逆効果で…(笑)」
長い、本当に長い時間を共有した。
思い出話は尽きない。
笑える話から、言葉にはしてないけど1人涙を飲んだ話まで。
色んなことを皆で乗りこえたんだから、いくら話したって飽きないし、何も話してなくても気まずさがない。
「これもあけちゃおっか!」
気持ちよくなって、すぐにおかわり。
居心地良くって、楽しくって。
二人のグラスはどんどん空いていく。
番組も終わって、相葉ちゃんの録画してある過去の番組を再生し始めて。
自分で観ることなんてないから、結構新鮮。
しかも隣には相葉ちゃんだし。
「俺さぁ」
んー?とグラスを回しながら、視線も移さず相槌を打つ。
「嵐に入れて、本当に良かったなぁ~って思うの。」
突然の真剣なトーンに、グラスを置いて相葉ちゃんを見る。
「ジャニーさんがさ、すげぇいっぱいいる中から選んでくれたわけじゃん。一人一人、バランス考えて…。俺は最後に、おまけみたいなもんだけどさ(笑)」
おまけなんかじゃない。
大袈裟だけど、運命だった、って思う。
相葉ちゃんがいなければ、多分、こんな続いてない…って割と本気で思う。
勿論、他のメンバーもそう。
誰が欠けても、誰が増えても、ダメ。
「ライブでも言ったけど…この4人で良かったなぁって思うの。気胸の時もさ、リーダーいっぱいメールくれて。皆で俺の事、迎えに来てくれたじゃん。
誰かが立ち止まったり、倒れたら、必ず他のメンバーが…こっちだよって少し戻って、手を差し出すの。お互いね。そういうのって、幸せ過ぎて。ちょっと怖いくらい。」
相葉ちゃんの目がうっすら潤む。
「…分かるよ。幸せ過ぎて怖いよね。辛いこととか、嫌なこと、いっぱいあるけど…その何倍も、何十倍も…幸せに感じる。このメンバーでよかった、って。この優しいメンバーだから乗り越えてこれたな、って。」
おいらの目も、同じように潤み出す。
飲むとお互い泣けてきちゃって。
サシ飲みで熱く語ってしまうのは、相葉ちゃんと似たような空気が流れてるからってニノが言ってたけど、それが理由なのかなぁ。
似たような空気、流れてるのかな?
俺はこんなに優しくて明るくなんてないけれど。
「リーダー。良かったね。俺ら運命的に出会えて。」
「うん、ほんと良かった。相葉ちゃん、出会ってくれてありがとお。」
「こちらこそありがとぉ!これからも頑張ってこうねぇ…!」
きつくハグを交わす。
背中ばんばん叩きながら。
二人ともうえ~っと号泣しながら。
「リーダー、大好きだよ~!」
「俺もだよ相葉ちゃん~愛してる~(泣)」
「俺も愛してる~~(泣)」
「………何してんすか。」
突然の呆れたニノの声に、へ?と2人で振り向く。
「…ふはっ、すげぇデジャヴ……ww」
続いて翔ちゃんの笑いを堪えた声。
「こええよ。メンバーが部屋で二人きりで自分らの番組見ながら号泣して抱き合ってるとか普通にホラーなんだけど。」
松潤が言葉とは裏腹に満面の笑みで言う。
「あれ、何で…?」
「チャイム鳴らしたんだけど反応ねーから。合鍵。」
ちゃり、とニノの手からぶら下がる銀色の鍵。
「ニノはよく来るから渡してたの。」
相葉ちゃんが悪戯っぽく笑う。
「お前ら何先に出来上がってんだよ~!待ってろよ~!!」
翔ちゃんが笑いながら俺らの髪をわしわしっと乱暴に撫でる。
だけどすぐに乱れた髪を直してくれる。
変なとこ、几帳面なんだから。
「何話してたのよ?」
松潤が笑いながらガサッとビニール袋をテーブルに置く。
おつまみやお酒がちらりと見える。
「嵐でよかったねって。」
相葉ちゃんが、ねー、と俺を見る。
ねーって返すと、ニノが「またかよ」と笑う。
うん、やっぱり、運命だよね。
いい歳こいたオッサンがさ。
二人して大泣きして、抱き合って出会えたことを喜び合える。
それを笑ってくれる仲間もいて。
呆れてはいるけど、決してバカにしない。
優しい、世界一の味方。
最高じゃんか。
こんな恵まれてていいのかな。
いつも思うんだ。
普通に友達になるかっつったら、ならないタイプじゃん。
なのに、こんなに長く一緒にいれんだよ。
奇跡だよ、こんなん。
友達よりも友達で、
家族よりも家族で、
恋人よりもずっと強固な絆。
まだ終わりませんっ(笑)
恋人の購入で初めて通販を利用する方へ、お気に入り通販ショップを見つけましょう
何も無い一日だったり
面倒な事を押し付けられた日だったり
仕事で自分自身の描きたいものでは無いものを描いている時だったりは、時間の流れがとてつもなく長く遅い
それを思えば先輩と離れるまでの時間で
色々な聞きたい事、知りたい事、お互いの事を話せる筈なのに、全く時間が無くて驚くし少し焦ってしまう
「…先輩、あの…」
「チャンミナ、声が枯れてる」
「…っ言わないでください
自分で分かってますから」
ベッドのなか、何も身に付けないまま先輩と寄り添う
朝、この先輩の家にやって来て一度抱き合ったのに、
更に午後を過ぎて二回も
それでもお互いに求める気持ちが収まらなくて
触れ合ったけれど、さすがに短時間で三回、は
お互い三十路にもなって無理だったからキスをしたり、
触れ合って息を整えて体力を回復させた
「今更かも、なので
何だか聞くのも恥ずかしいんですが…」
「何?チャンミナに知りたいって思ってもられるのは嬉しいよ」
先輩の右腕を枕にして並んで横たわる
その右手は僕の胸辺りを彷徨っていて、
たまに敏感なところを掠める
「…っ…その…
仕事は今何を…?
写真だとは噂で聞いていますが、具体的に知りたくて」
そう、僕は『今』の先輩の事をまだ何も知らない
昔よりも自然体になった事や
僕に対して甘えてくれるようになった事
本当は東京にいる事を息苦しいと思っていた事
それらは少し分かったけれど、
日常の先輩を何も知らないんだ
「あはは、確かにそうだな
先に告白したりまた付き合おうだとか…
今みたいに裸を見たり…
少し不誠実だったかな?」
「…そんな事無いです
僕も欲しかったし、好きで止まらなかったから」
昔よりも厚くなった胸板に顔を埋めた
ついさっきまで汗ばんでいたのに
今はもう汗も引いていて、
それを少し残念だと思ってしまった
「雑誌と契約して写真を提供してるよ」
「専属のフォトグラファーという事ですか?」
「専属じゃないけどね
フリーランスで色々受けてるよ」
そう言うと、先輩は「ちょっと待ってて」
と告げてゆっくり右腕を僕の首の下から引き抜いた
少し寂しいけれど、そんな事言うのも顔に出すのも恥ずかしいから何でも無い振りをしていた
でも、先輩はくすりと笑ってこめかみにキスをした
「せっかくだからチャンミナにも見て欲しい」
裸のまま何も気にする事無く立ち上がる
ベッドサイドの本棚から雑誌を何冊か取り出して
直ぐにベッドのなかに戻って来てくれた
「これ、隔月で連載してるんだ」
それは僕でも知っている自然科学系の雑誌だった
なかなか手に取って読む事は無いけれど、
名前を聞けばきっと知っているひとは多いだろう
先輩は座って、嬉しそうに雑誌を捲る
僕も起き上がって雑誌を覗き込もうとしたんだけれど…
「…っ…あ…」
「痛い?大丈夫?」
「…大丈夫、です」
先輩を受け入れた場所
痛みもやはりまだ有るけれど…
そうでは無くて、少しだけ先輩のモノが残っていて
体勢を変えたらつう、と流れたのが分かって身体が震えた
心配そうに僕を覗き込むから大丈夫、と笑った
「連載なんて凄いです
この雑誌、書店で見た事は有りますが
読んだ事は無くて…
これからは定期購読します」
「本当に?ありがとう
チャンミナの興味を引く記事が有るかは分からないけど、なかなか興味深い特集も多いんだ」
先輩は自身が興味のあるページを開いては
僕にそれを見せてくれる
都会で忙しなくしていると全てがいつも流れ作業のようで、それは当たり前の事で嫌だとも思っていなかったし、東京には何だって有ると思っていた
だけど、先輩が見せてくれる雑誌のなかには
宇宙の事だったり世界中の動植物や社会情勢まで
何気無くニュースを見ていても気付かないような事が書いてあって、興味を引かれた
「…可愛い」
先輩に雑誌を手渡されてぱらぱらと捲っていたら
そこには鹿の写真が載っていた
どうやらそれは先輩の写真では無いし、
スコットランドだと書いてある
「そう言えば、チャンミナは大学でバンビって呼ばれてたよな
目が大きくて、身長は有るのに小動物みたいで…」
「…そんな恥ずかしい事蒸し返さないでください
男がバンビなんて…」
「そう?今でもバンビのように可愛いし…
でも、今は可愛い、より綺麗になったかな」
褒められている事は嬉しいけれど恥ずかしくて
雑誌の記事を読んでいたら、
先輩の右手が伸びてページを捲る
「あっ読んでたのに…」
「ごめんごめん
俺の連載も見て欲しくて」
言われて思い出した
鹿も可愛いけれど、
それより先輩の写真と連載記事が見たいんだ
「見たいです、先輩の写真も記事も」
「本当に?鹿の方が良いんじゃないの?」
「そんな事無いです
だって、
どうして今までこの雑誌を見て来なかったんだろうって後悔してるんです」
ベッドの上で脚を伸ばして座る
肩と肩、先輩の右腕と僕の左腕がぴとり、とくっつく
先輩は少しだけ恥ずかしそうに笑って、
後ろの方のページを捲った
「これ、連載って言っても小さなコラムだけど」
そう言って指差したのは
一ページの半分を使ったコラムだった
「え、これ…」
驚いたのは、
先輩の顔が連載タイトルの横に載っている事
「どうした?」
「顔なんて載せてたら…
誘われたりとかファンレターとか…
先輩かっこいいから、きっと有りますよね?」
上目遣いに見つめたら少しだけ瞳を泳がせる
「可愛い女の子とか…
そうじゃなくても編集部の女性とか…」
「……」
「やっぱり…嫉妬します」
何も答えてくれないから勝手な想像ばかり膨らむ
僕を好きだと言ってくれる先輩に嘘は無い筈
だけど、きっと先輩を良いと思うひとはたくさんいる
それは大学時代だって同じで、だから僕はそんな先輩と恋人である事に劣等感を抱く事もあった
でも、今も昔と同じように自分に自信なんて無いけど、
諦めたり引いて後悔したくないし、
先輩を好きな事はやっぱり譲れない
「僕だって先輩を諦めないし…
誰かに渡したりしたくないです」
俯きながら言ったら、
頭に何かが触れた
掌かと思って顔を上げたらもう一度触れて、
それが唇だったと分かった
「あの頃も今も…見てくれで迫って来るひとはいるよ
でも、自分を出せるのはチャンミンの前だけだって分かった
だから心配する事なんてひとつも無いよ
それよりちゃんと中身も見て?」
「え…あ、すみません」
先輩の顔が載っている事で焦ってしまった
僕は目先の事しか見えていなくて視野が狭い
情けなくて溜息を吐いたら、
今度はぽん、と右手が僕の頭に乗せられた
「先輩?」
「好きなひとに独占欲を見せられるのは、
こんなに嬉しいんだな
大学の時、チャンミナはあまり何も言ってくれなかったから本当は少し寂しかった」
「…それは…我慢していて
迷惑を掛けたく無かったし」
そう言うと「そうか」と懐かしむように、
少し切なげに微笑む
僕はあの頃こどもで、先輩に対して恋愛感情だけでなく『敵わない』という思いもきっと大きかった
だから身を引いて別れを了承したし、
付き合っている時も我慢した思い出がある
それでも当時の僕は先輩を本当に好きで、
嘘を吐いた訳でも無い
でも…
「これからは、後悔しない為にちゃんと独占欲も出していきます
あの頃は我慢するのが正解だって思っていたから…」
「うん、お互いに思っている事はちゃんと伝え合おう」
先輩のコラムは北海道の自然を切り取った写真と、
それから先輩の自然に対する思いが文字として綴られている
それはとても優しく、優しいのに芯があって、
今の先輩を見てそのままだと感じた
「先輩はやっぱり凄いです
僕は…絵を描く事が好きでそれを運良く続けてこれていますが、まだ夢や目標は無くて…」
「今はチャンミナはどうしているの?
コンクールで入選していただろ?」
そう、先輩は僕の名前を
小さなコンクールのなかに見つけてくれていた
嬉しいけれど、それくらいしか無いんだ
「描きたいものを描いてはいます
でもなかなか収入にはならなくて…
今は知人の画廊で働きながら絵を勉強して描いています」
だから、明日はいつも通り画廊へ働きに行く
受付と雑務が主だから座っていられるし、
捻挫していても支障は無い
二歳の年の差はあるけれど、
それを差し引いても
先輩と僕の差はきっと縮まらないだろう
先輩が撮った北海道の美しい景色を指でなぞった
「チャンミナ」
「はい、先輩」
「ユノ、だろ」
呼び方を訂正されて思わず顔を上げたら、
優しく僕を見つめる先輩、いや、ユノ
「…ユノ、まだ慣れないです」
「美大を卒業して、
専門分野以外で働くひとも多いんだよ
チャンミナだって知ってるだろ?
そんななかで絵を描いていられる事は、
好きな事を続けていられるのは誇るべき事だ
自分を卑下しないで」
「……ありがとうございます」
比べると自分の小ささが恥ずかしい
だけど、先輩はこんな僕にも優しい
「俺だってまだまだ夢半ばなんだ
それに、ひとりで叶えられるか…
寂しいしどうしようかって悩んでるんだ
聞いてくれる?」
「夢、先輩の…んっ…」
聞こうとしたら、キスで唇を塞がれた
「ユノ、だろ」
「…ユノ……」
名前を呼ぶと、少しずつ先輩が近付いて来る気がする
夢の話を聞きたいけれど、一度触れたらまた触れたくなって、先輩を見あげたら困ったように笑う
「キスしてください…ユノ」
「…こんな時に名前を呼ぶなんて、
チャンミナも成長したな」
時間はやっぱりどれだけあっても足りない
それでも、僕達の距離は少しずつ縮まっている
そして、離れるまでの時間もそれに比例するように縮まっているんだ
ランキングに参加しています
お話のやる気スイッチになるので
読んだよ、のぽちっ↓をお願いします
恋人 通りがかりの他人ほど、好奇心旺盛である。
キスってこんなに心が温かく感じるものだったんだ。
今まで形ばかりの彼女としたキスとは全く違った。それが例え一方的な思いだとしても。
しょーちゃん…好き、大好きだよ。
何で俺は男に生まれてきちゃったのかな。
涙が溢れ頬を何度も伝った。
しょーちゃんが目を覚ましたらいけないと思い部屋を出た。
リビングのソファーに座り声を殺して泣いた。
忘れたい、忘れたい。
おまじないのように繰り返すけど自分の心の中にはしょーちゃんへの思いがはっきりとしたカタチになっていて。
しばらくぼんやりしてたけど涙を拭ってしょーちゃんの部屋に戻った。
ドアを開け頬を触るとまだ熱くて胸元からTシャツを触ると汗で濡れていた。
「しょーちゃん起きて?」
「……ん…あ、雅紀まだ居てくれたの?」
「ほおっておける訳ないでしょ?それより汗かいてるから着替えよ?」
「うん…」
素直にパジャマを脱ぐしょーちゃんにドキドキしてしまい、バレないようにするのに必死だった。
「熱、計ってみよ?」
「うん…」
ピピッ♪
「38度か。なかなか下がらないね。今日、しょーちゃんママは帰って来るの?」
「いや、明日帰るって」
「そっか。じゃあ夕飯は食べれそう?」
「ちょっとお腹すいた…」
「じゃあお粥とうどん、どっちがいい?」
「お粥…」
「分かった。じゃあ作ってくるからしょーちゃんは寝てていいからね」
「ごめんな」
扉を閉めて階段を降りながらこんな時俺が女の子だったら恋に発展したりするのかな何てベタな事考えてため息が漏れた。
☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆
東京3日間無事に終わって何よりです。
皆さんのレポ読んでたらDVD観たくなって
ほぼ記憶のない5×10を観たら。
最後手を繋ぐとこで右から
翔、雅紀、ニノ、智、潤
だったんだけど。
雅紀はニノちゃんと恋人繋ぎしてて
翔ちゃんと繋ぐ方はマイク持ってたの。
そんなの真ん中はみんなそうなのに
翔ちゃんわざわざ雅紀のマイク受け取って
恋人繋ぎしてたのー‼️
萌えました。
昔のは腐った目で見てなかったからな。←